損失ありの届出の約6%が総額の70%
顧客からの相談を件数だけで分類すると、少数でも損失の大きい詐欺を見落としかねません。米連邦取引委員会(FTC)は2026年10月19日、60歳以上の消費者を扱う年度報告を公表しました。
2025年1〜12月に集まった60歳以上の詐欺届出は46万9,597件。このうち損失ありは約12万3,000件で、報告された損失は30億米ドル超です。10万米ドルを超える損失の届出は、損失ありの約6%でしたが、報告総損失の70%を占めました。
6%は高齢者全体の被害率ではなく、70%は届出件数の割合でもありません。企業の窓口でも、相談件数と申告された被害額を分けて見る材料になります。
自己申告の届出と被害の全体像を分ける
数字はFTCのConsumer Sentinel Networkに届いた自己申告の集計です。無作為抽出のアンケートや、端末の動作を観測した結果ではありません。
年齢の記載があるのは全詐欺届出の46%。年齢区分が異なるIC3のデータは除外されています。また、FTCは2025年10月1日〜11月13日に予算切れに伴い届出の受付を停止していました。
未届けの被害もあり、この総額は実被害全体を表しません。届出1件を被害者1人と置き換えたり、日本の顧客の被害率に当てはめたりはできません。集計期間と受付条件を添えず、金額だけを社内の被害予測に使うことは避けます。
送金前に正規窓口へ戻れる導線を作る
FTCの注意喚起には、偽のサポート担当から政府機関を名乗る相手へ引き継ぎ、「資金を守る」ための送金へ誘導する手口が載っています。更新料や返金のメールから、偽窓口へ電話させる例もあります。
自社で顧客対応を設計するなら、請求・返金の案内に正規の連絡先と手続きを示し、不審な連絡を受けた人が問い合わせ直せるようにします。届いたメールや警告内の番号へ連絡せず、既知の公式窓口へ戻るというFTCの助言を、問い合わせ案内にも生かせます。
例えば「返金が多すぎたので差額を振り込んでほしい」という相談は、通常の返金照会と分けて扱います。受信した連絡での要求と、自社の請求・返金記録が一致しているかを、担当部署が独立に照合する流れにします。相談者に追加操作を求める前に、現時点で何を伝え、誰へ引き継いだかを記録します。
窓口のFAQには、不審な送金要求の相談を責任者へ引き継ぐ基準を用意します。緊急性をあおる言葉、指定口座への資金移動、遠隔操作の要求など、相談内容を記録する項目を決めます。受付担当者がその場で真偽を断定できなくても、次の担当者へ判断材料を渡せます。
これは公表資料を基にした運用提案で、被害削減効果を実測した手順ではありません。相談の記録を件数と金額に分けて残し、少数の高額被害を含めて対応の優先順位を見直します。
参考資料:FTC年度報告(2026年10月19日、本文p.19・21) / FTCのサポート詐欺対策。確認日:2026年10月30日。
