Zendesk QA(品質管理)の機能:AutoQAとコーチング

カスタマーサポートの品質を確認するとき、担当者が対応済みチケットを数件選び、文章や案内内容を目視でチェックする方法がよく使われます。しかし、問い合わせ件数が増えるほど確認できる割合は小さくなり、問題のある会話を見逃しやすくなります。評価する人によって採点が変わることもあります。

Zendesk QA(品質管理)は、Zendesk上のカスタマーとの会話を集め、手動レビューとAIによる自動評価を組み合わせて、対応品質を継続的に改善するための製品です。以前はKlausという名称で提供されていた製品がZendeskに統合され、現在はZendesk QAとして提供されています。

この記事では、Zendesk QAで何ができるのかを、AutoQA、スコアカード、ダッシュボード、キャリブレーション、コーチングなどの機能に分けて解説します。

この記事は2026年9月時点のZendesk公式情報を基にしています。利用できる機能、画面、料金、対応言語は、契約プラン、アドオン、導入時期、段階的なロールアウトによって異なる場合があります。

Zendesk QAの主な機能

  • Zendesk QAは、問い合わせを採点するだけでなく、問題の発見から教育までを管理する製品
  • スコアカードによる手動レビューと、AutoQAによる自動評価を併用できる
  • メールやチャットなどのテキスト会話に加え、AIエージェントや音声通話も評価対象にできる
  • 解約リスク、SLA違反、エスカレーションなど、確認すべき会話を優先的に探せる
  • 自動評価の結果は人間の評価と比較し、精度を継続的に確認する必要がある
  • Zendesk SupportやSuiteの基本機能ではなく、別途契約するアドオン

Zendesk QAとは

Zendesk QAは、問い合わせ対応の内容を「収集する」「見つける」「評価する」「分析する」「改善する」という一連の流れを支援します。

段階 Zendesk QAで行うこと
収集 Zendesk Supportなどから会話データを取り込む
発見 フィルターやスポットライトで確認すべき会話を絞り込む
評価 スコアカードとAutoQAで対応品質を採点する
分析 ダッシュボードで担当者別・カテゴリ別の傾向を見る
改善 フィードバック、キャリブレーション、コーチングへつなげる

Zendesk Supportのチケット件数や解決時間を集計するだけではなく、実際の会話内容を基に「カスタマーの意図を理解できていたか」「適切な解決策を提示できたか」といった品質を確認する点が特徴です。

Zendesk QAでできる7つのこと

1. 問い合わせの会話をまとめて確認する

Zendesk QAを契約すると、Zendesk Supportのチケット会話がQAへ取り込まれます。メール、メッセージングなど、最終的にZendesk Supportのチケットとして管理される会話を横断して確認できます。

チケット会話は通常4~6時間ごとにZendesk QAへ同期されます。必要に応じて、同期する会話の条件、データ保持期間、レビュー担当者へ表示しない内容などをコネクション設定で管理できます。

これは、すべての会話がリアルタイムに表示されるという意味ではありません。発生中の会話を検知するリアルタイムQAについては、後ほど別に説明します。

2. スコアカードで手動レビューする

スコアカードは、会話を共通の基準で評価するためのフォームです。評価カテゴリ、選択肢、配点、ウェイト、重要カテゴリなどを組み合わせ、自社の品質基準を形にできます。

たとえば、次のようなカテゴリが考えられます。

  • 問い合わせ内容を正しく理解したか
  • 必要な情報を漏れなく案内したか
  • 本人確認やセキュリティ手順を守ったか
  • カスタマーに分かりやすい文章だったか
  • 適切な解決策または次の行動を提示したか
  • 必要な場合に有人対応へ切り替えたか

レビュー担当者は、会話全体や特定のメッセージに対してスコアとコメントを残せます。手動レビューの結果は、社内品質スコアであるIQS(Internal Quality Score)として集計されます。

重要カテゴリを設定すると、その項目の評価が基準を下回った場合に、レビュー全体のスコアを0%にすることもできます。コンプライアンス違反や本人確認漏れなど、平均点だけでは扱いにくい重大な問題を区別するために利用できます。

3. AutoQAで会話を自動評価する

AutoQAを使用すると、AIが会話を分析し、設定されたカテゴリを自動的に採点します。少数のチケットを無作為に抜き取る方法と比べて、対象となる会話を広く評価し、見逃していた傾向を発見しやすくなります。

テキストベースの会話で用意されている主なシステムカテゴリは次のとおりです。

  • 挨拶
  • 共感力
  • スペルと文法
  • クロージング
  • 提供されたソリューション
  • トーン
  • 読みやすさ
  • 理解力

自動評価の結果は、AQS(AutoQA Score)として手動レビューのIQSとは分けて確認します。

ただし、AutoQAをオンにしただけで、無条件にすべてのチケットが採点されるわけではありません。自動評価カテゴリを有効にし、アクティブなスコアカードとワークスペースへ割り当て、評価対象者が必要な条件を満たすよう設定する必要があります。カテゴリによって、チケット同期時に評価されるものと、チケットが解決済みまたは終了になってから評価されるものがあります。

4. 確認すべき会話を自動的に見つける

大量の会話を評価できても、すべてを人が読み直すことは現実的ではありません。Zendesk QAでは、会話フィルターやスポットライトを使って、改善や追加確認が必要な会話を探せます。

スポットライトで用意されている主な検出項目には、次のようなものがあります。

  • 通常とは異なる会話を示す外れ値
  • 解約リスク
  • エスカレーション
  • フォローアップ
  • 優れたサービス
  • カスタマーのセンチメント
  • SLA違反
  • AIエージェントのコミュニケーション効率
  • AIエージェントによる会話の繰り返し
  • 音声通話のデッドエア

インテリジェントフィルターでは、AIエージェントだけで完了した会話、人間へエスカレーションされた会話、カスタマーがAIエージェントに不満を示した会話、低いカテゴリスコアがある会話などを絞り込めます。

スポットライトは会話を採点するスコアカードとは目的が異なります。スコアカードは共通基準で評価するために使い、スポットライトは人が確認すべき会話を発見するために使います。

5. 独自のAI評価条件を作る

プロンプトベースのAIインサイトでは、自然言語で会話に対する質問を作り、自社独自の条件で自動スコアリングまたはフラグ付けできます。

たとえば、次のような評価条件を設定する使い方が考えられます。

  • 解約を希望するカスタマーへ必要な注意事項を案内したか
  • 返金を確約する前に対象条件を確認したか
  • 障害の問い合わせで、復旧時刻を根拠なく断定していないか
  • 個人情報をメール本文へ記載するよう求めていないか
  • 担当者が次の対応期限を明確に伝えたか

Zendeskが用意したプロンプトをそのまま使うほか、内容を編集したり、新しいプロンプトを作成したりできます。完全一致した単語やフレーズを検出するルールも利用できます。

プロンプトは、曖昧な問いだけでは安定した評価になりません。「該当する条件」「該当しない条件」「高い評価と低い評価の例」まで具体的に定義し、人による評価結果と比較しながら調整します。

6. ダッシュボードで傾向と評価精度を確認する

Zendesk QAのダッシュボードでは、チーム、担当者、ワークスペース、カテゴリなどの単位で品質の変化を確認できます。

主に区別したい指標は次のとおりです。

指標 内容
IQS 手動レビューを基に計算される社内品質スコア
AQS AutoQAによって評価された会話の平均品質スコア
合格率 設定した品質基準を満たしたレビューの割合
AutoQA精度 AutoQAの評価と人間の評価の一致度

平均スコアだけでなく、特定カテゴリの低下、担当者ごとの差、スコアが変更されたAutoQA会話、問題の根本原因などを確認できます。

自動評価の精度は固定ではありません。人間のレビュー結果とAutoQAの結果を比較し、評価がずれやすいカテゴリを特定します。評価基準やプロンプトを変更した後も、同じ条件で精度を確認します。

7. 評価結果をフィードバックと教育につなげる

品質管理は、低いスコアを付けることが目的ではありません。Zendesk QAには、評価結果を改善行動へつなげるための機能があります。

キャリブレーション

複数のレビュー担当者が同じ会話を評価し、スコアとコメントを比較します。誰が評価しても同じ結果になる状態を目指し、評価基準の解釈やフィードバックの違いを調整できます。キャリブレーションの結果は通常のIQSへ影響しません。

異議申し立て

評価された担当者は、レビュー結果に対して異議を申し立てられます。レビュー担当者や管理者は、内容を確認し、承諾、一部承諾、拒否などの対応とコメントを残せます。

レビュー担当者の評価

エージェントだけでなく、レビュー担当者の採点やコメントも評価できます。評価者ごとの採点の偏りや、フィードバックの不足を見つけるために利用します。

コーチングとクイズ

改善が必要な担当者に対して、対象の会話、話し合うポイント、メモ、アクション項目をまとめたコーチングセッションを作成できます。選択式のクイズを作り、製品知識や対応ルールの理解度を確認することもできます。

このように、Zendesk QAは「会話を評価して終わる」のではなく、評価、対話、教育、再評価を一つのサイクルとして管理します。

AIエージェントの会話評価

Zendesk QAでは、人間のエージェントと同様に、AIエージェントが対応した会話もスコアカードで評価できます。AutoQAが有効な場合は自動評価し、必要に応じて人が手動でレビューすることもできます。

確認したいのは、単にAIエージェントが会話を終了したかどうかだけではありません。

  • カスタマーの意図を正しく理解したか
  • ナレッジに沿った解決策を提示したか
  • 同じ質問や案内を繰り返していないか
  • カスタマーが不満を示していないか
  • 必要な場合に人間へエスカレーションしたか
  • エスカレーション時に必要な情報を引き継いだか

AIエージェントの自動解決率が高くても、誤った回答で会話が終わっていれば品質が高いとはいえません。解決結果と会話内容の評価を組み合わせることで、ナレッジ、回答設定、有人引き継ぎの改善点を見つけやすくなります。

音声通話の品質も確認できる

音声通話用QAを有効にすると、通話の会話ログや要約を使い、録音を最初から最後まで聞かなくてもレビュー対象を絞り込めます。

音声通話では、挨拶、クロージング、共感力、理解力、提供されたソリューションなどを自動評価できます。解約リスク、センチメント、通常と異なる会話、会話が途切れたデッドエア、録音についての案内が含まれない通話なども確認対象にできます。

通話録音は、分析前にZendesk QAへ取り込む必要があります。Zendesk Talk以外の電話システムを利用している場合は、利用している接続方式や対応状況を個別に確認します。

ExploreやAIエージェントの会話ログとの違い

Zendeskには、QA以外にも問い合わせを分析する機能があります。それぞれの役割を分けて考えると導入目的が明確になります。

機能 主な目的
Zendesk Explore チケット件数、解決時間、SLAなどの業務指標を集計・分析する
AIエージェントの会話ログ AIエージェントの個々の会話や動作を確認し、回答設定を改善する
Zendesk QA 人間とAIの会話品質を共通基準で評価し、フィードバックと教育につなげる

Exploreで「解決時間が悪化した」ことを見つけ、Zendesk QAで「どの会話や対応カテゴリに問題があるか」を確認するなど、組み合わせて使うこともできます。

リアルタイムQAと通常のAutoQAの違い

通常のZendesk QAでは、Zendesk Supportの会話が一定間隔で同期された後に分析されます。一方、リアルタイムQAインサイトは、進行中のチケット会話からプライバシー上の懸念、脆弱性、不正利用、解約リスク、未解決の問題などを検出し、エージェントワークスペースやエージェントホームへ表示する機能です。

2026年9月時点では、リアルタイムQAインサイトは早期アクセスプログラム(EAP)として案内されており、新規登録を受け付けていません。標準提供済みの機能として導入計画へ含めず、自社アカウントでの提供状況を確認してください。

導入前に確認したい注意点

Zendesk QAは別契約のアドオン

Zendesk QAは、Zendesk SupportまたはSuiteの各プランで購入できるアドオンです。料金、購入単位、WFMとのセット契約は、地域や契約形態によって異なる可能性があるため、管理センターのサブスクリプション画面またはZendeskの担当者へ確認します。

自動評価の精度調整

標準カテゴリを有効にしても、自社の対応方針と評価結果が完全に一致するとは限りません。代表的な会話を人が評価し、AutoQAとの一致度を確認します。

自社独自のAIインサイトについては、問いを具体的にし、該当例と非該当例を用意します。評価条件を一度に増やさず、重要な項目から段階的に導入します。

データの保存範囲と権限を確認する

QAでは実際の会話内容を扱うため、個人情報、決済情報、社内情報が含まれる可能性があります。データ保持期間、同期対象、レビュー担当者へ表示する内容、ワークスペースごとの権限を確認します。

Zendeskは、LLMベースのAutoQAで処理されるデータはDPAに基づいて扱われ、モデルのトレーニングには使用されないと説明しています。また、プロンプトベースのAIインサイトでは、LLMへ送信する前に音声通話の会話ログや概要に含まれるPII・PCIデータを墨消しするとしています。実際の導入では、自社の契約条件とデータ処理要件も併せて確認してください。

対応言語を実データで確認する

AutoQAカテゴリで対応する言語は、カテゴリとLLMベースのAutoQA設定によって異なります。日本語を含む実際の問い合わせ文を使い、表記ゆれ、敬語、短文、専門用語が正しく評価されるかを確認します。

Zendesk QAの導入手順

Zendesk QAは機能が多いため、最初からすべてを設定すると、スコアを見るだけで改善につながらない可能性があります。まずは一つのチームや問い合わせ種別に対象を絞ります。

  1. 改善したい品質上の問題を一つ決める
  2. 少数の重要カテゴリでスコアカードを作る
  3. 実際の会話を複数人で手動レビューする
  4. キャリブレーションで評価基準を揃える
  5. AutoQAとスポットライトを有効にする
  6. 人間の評価とAutoQAの精度を比較する
  7. 週次または月次で、改善対象と担当者を決める
  8. コーチング後に同じカテゴリを再評価する

「スコアを何点にするか」よりも、「どの問題を見つけ、誰が、いつまでに、何を改善するか」を先に決めることが重要です。

Zendesk QAが向いている組織

Zendesk QAは、次のような課題がある組織に向いています。

  • 問い合わせ件数が多く、手動の抜き取り確認だけでは全体像が見えない
  • SVやレビュー担当者によって評価基準が異なる
  • 担当者ごとの対応品質を継続的に確認したい
  • 解約リスクや重大な誤案内を優先して見つけたい
  • 評価結果を1対1のコーチングや研修へつなげたい
  • 人間とAIエージェントを同じ品質方針で管理したい
  • メール、チャット、音声の品質管理をまとめたい

一方、評価基準が決まっていない組織では、先に「良い対応とは何か」を整理する必要があります。ツールを導入するだけで品質管理の基準が自動的に完成するわけではありません。

まとめ

Zendesk QAは、問い合わせ対応を採点するだけの製品ではありません。会話を集め、確認すべき対応を見つけ、手動またはAIで評価し、ダッシュボードで傾向を分析して、フィードバックとコーチングへつなげる品質改善の基盤です。

AutoQAによって評価対象を広げられる一方、自動評価の精度確認、評価基準のキャリブレーション、データ範囲と権限の設計は必要です。まずは一つのチームと少数の重要カテゴリから始め、人によるレビュー結果と比較しながら対象を広げる進め方が現実的です。

KIRIKOMIでは、Zendeskの設定・運用改善とAIエージェントの設計・実装を、実際の問い合わせ内容と運用体制に合わせて支援しています。AIエージェント導入後の改善方法については、Zendesk AIエージェントの回答品質を改善する方法もご覧ください。

参考資料

掲載内容は公開時点の情報です。利用できる機能や提供時期は、契約プランやアカウントによって異なる場合があります。

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